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大会実行委員長 渡辺雅之
東京学芸大学 教授
いろはにほへと塾 塾頭













その9 ベトナムバイクと車の流れ ( 2010.04.16 )

ベトナムに初めて来てみて最も困ったことが道路の横断でした。とにかく夥しいバイクバイク、バイクの群れ、すごい。見惚れてしまいました。

 一人乗り、二人乗りは日本でも見なれたシーン。けれども、ここベトナムでは三人乗り(両親の間に子どもが挟まれていた)、四人乗り(さらに子どもが運転するお父さんの前にいる、あるいは両親が二人を挟む)が珍しくない。すげぇ。

 ある時突然の雨。すると、雨合羽やビニールカバーを被って平然と走り去ってゆきました。すばらしい。

 夕暮れどき、ほろ酔い加減で散歩に出かけますと、退勤した勤め人たちに代わって若いカップルがバイクで走ってゆきます。もちろん二人乗りで後部の女性は両腕で男性のおなかにしっかりつかまりながら。ベトナムではメタボな人にはあまり出会いませんね。

 どこに、何をしに行くのでしょうかね。野暮なことは聞くなってですか?いやぁ興味津々なんですよ。答えは、えっ、という感じ。どこに行くわけでもなく、街をバイクで走り回っているとのこと。なーんだ、ドライブか。

 ホーチミン市内でも信号は案外と少ないものです。車やバスで移動する際にはあまり気にならないのですが、ホテルを出て街を散策したり、食事や買い物に出る時には面喰います。どうやって渡ればいいのか、とにかく流れは止まらずひっきりなしにバイク、バイク、バイク、そして車が走っているのですから。

 とにかくバイクの波という感じです。どうやって渡るか。これは日本でやってはいけませんよ。ていうか、できないと思いますけど。左右をあまり見ずに、とにかく私は渡りたいという意識を明確にして、ゆっくりと一定ペースで歩きます。決して走ってはいけません。クラクションがバンバン鳴っています。クラクションて鳴らすための道具だって言うことを改めて教えられます。すると、バイクの波が私を避けていくのですよ。川に刺す竿のように。

 一定ペースが重要ですね。決して走ってはなりません。加速すると相手が避けきれません。実にスムーズな流れです。信号が出来たり、交通ルールが煩雑な現代において原初の交通ルール「自然な動き」がここにあります。  

 「そんなに急いでどこ行くの」という交通標語がありました。のどかでしたね。それがどんどん忙しくなってしまいました。ユッタリズムがありません。人に勝つためには急がないといけないのでしょうね。私は勝たなくていいや。ゆっくりがいい。

 いつでも、どこでもUターンOKなので、とんでもないことを眺めることができました。ある時、前を行く大型のトラックがUターンしようとしています。当然後方の私たちは止まって待たねばなりません。バイクもしかりです。左へ旋回してUターンしようと、トラックは道路を両車線ともふさぎます。そして、反対車線にハンドルを切ってトラックがUターンし終えて見えた風景に仰天しました。何と両車線ともバイクと車で占領されていました。でも、誰も何も文句を言いません。実に自然な出来事のように見えます。そろそろと動き始めます。私たちの前から来るバイクは少しずつ、少しずつハンドルを切ってゆき、やがて元の流れの通りに戻りました。

 「ロハス」な生き方が一時話題となりましたが、いつの間にやらマスコミからも人々の頭からもどこかへ。私は、持続性のあるやり方がいいと思うのですが、大量消費型から抜けきれないようですね。

 ここベトナムは、実にロハスです。やがて、大量消費型へ移行してしまうでしょうけど。ロハスなベトナムが好きです。


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