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大会実行委員長 渡辺雅之
東京学芸大学 教授
いろはにほへと塾 塾頭













その20 福本清三という斬られ役俳優 ( 2010.07.02)

 トム・クルーズの「ラストサムライ」をご覧になった方は多いと思います。トム・クルーズ扮するネイサン・オルグレンが妙に日本的な身体さばきを見せていたことが不思議だなぁと感じた印象がありました。刀さばきもいいし、和服の着こなしも堂に入っていました。この映画に出演された福本清三さんの記事からその謎をご紹介しましょう。福本さんと言えば、斬られ役俳優として画面になくてはならない存在となっています。

 Q:映画の作り方は?
 スケールが雲泥の差です。ニュージーランドで4カ月ロケしたんですが、山の中に日本の昔の農村風景が完璧に再現されているんです。畦道から農家、調度、草履に至るまで。どうやってここまで調べたのかと思うほど。
 合戦に参加する500人の日本人エキストラを3カ月にわたって現地で合宿させたんです。ベトナム戦争に参加した下士官がやってきて、整列の仕方から鉄砲の持ち方、歩き方まで本物の軍隊らしく見えるまで訓練して、初めてロケ地にやってくる。
 日本やったら、当日、何回かリハーサルやって撮影ですわ。

Q:スタッフは?
 プロ意識が違います。仕事に誇りを持っています。扮装のテストで、日本なら最後に監督にOKもらうでしょ。あっちは衣装のスタッフが決めたら「監督には何も言わせない」ですわ。
 全盛期は東映もそうやった。衣装さんだって小道具さんだって、これで食ってるという強烈なプロ意識がありました。映画が大好きで徹夜でも文句は言わんかった。
 準備と自信がすごい。兜の錣や鎧の札をつなぐ糸を地球何周分も染めたって美術さんがいうんです。僕らより日本の歴史を勉強していて、侍や武士道に詳しいし、惚れている。
 「時代劇でうわべだけ追ってきたんちゃうやろか」と反省させられました。

Q:日米で殺陣の違いは?
 日本は引いて斬る。そのために日本刀は反っているんや。直刀の向こうははたく。合戦シーンではプロテクターつけさせて、竹光じゃなくジュラルミンの刀で「思いっきりシバケ」ですわ。どうしても納得いかんところは直してもらいましたけど。
 トム・クルーズさんはさすがに8カ月も日本刀で訓練しただけあって腰が据わって、さまになっているんですよ。「日本舞踊からお茶、着付けまで習った」言ってました。
 合戦シーンの撮影が終わってロケが終了したときです。トムさんが「素晴らしい映画になった。あなたたちがいたおかげだ」って全員の前で話したんです。監督もエキストラも涙流してました。

Q:アメリカに時代劇の大作を作られて日本人として哀しい気もします。
 ほんまやね。でも、あれはハリウッドしか撮れんかった。今の日本の監督で100億円使える人はいないでしょ。黒澤明さんが最後やね。
 以上が2010年1月28日夕刊の記事からでした。日本人エキストラたちを指導するのが「ベトナム戦争に参加した下士官」という物言いが目を引きました。おそらくアメリカの軍隊からでしょうね。映画づくりの裏側のすさまじさに比べて、なんか妙だなと感じました。

 

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