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大会実行委員長 渡辺雅之
東京学芸大学 教授
いろはにほへと塾 塾頭













その23 映画「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」を見たい ( 2010.07.23 )

 パスポートが切れてしまった。2000年4月にとって10年が過ぎたわけだ。この10年間よく動いたものだと思う。出入国のスタンプが一杯だ。まっさらなページが僅かしか残っていなかった。

 パスポートセンターへ行った時「ハーツ・アンド・マインド」の日本初公開を知った。

 結局見に行くことが出来なかったけど、次の機会を期待したい。あるいは、DVDで。

 この映画は第47回(1975年)アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。

 あの戦争はなぜ起こり、アメリカはそこで何をしたのか?政治家たちが語る大儀、最前線から帰還した兵士の叫び、戦死した兵士の家族の悲しみ、村を焼かれ、子供を殺された人々の叫び・・・。様々な証言や取材映像、ニュース・フィルムを駆使して戦争の愚かさと悲惨さを鮮烈に描いてアカデミー賞を受賞。反戦運動をさらに激化させて無意味な戦争にとどめを刺したともいわれる伝説のドキュメンタリ映画史上最高傑作。

 以上がチラシの中の解説である。

 朝日新聞の論説委員石橋英昭さんの署名記事(2010年6月5日付夕刊)を見つけた。

 試写を見終わって、この題名がなぜか耳から離れない。ジョンソン大統領が演説で使ったフレーズからとられている。

 「究極の勝利は、ベトナムに生きる人々の人心(hearts and minds)にかかっているのだ」

 東西対立のただ中、米国にはベトナムの人々を共産主義から守るという使命感が強かった。残虐な軍事作戦の一方、民生支援や文化宣撫工作を繰り広げた。ハーツ&マインズ獲得の成否がどうだったかは、歴史が示す通りである。

 近年、この言葉をまたよく聞く。世界の紛争地で、軍隊が人道・復興支援にかかわることが増えたからだ。

 破綻国家の再建過程では、武装勢力平定と並行し、人々の支持を広げる必要がある。イラク復興には自衛隊も加わった。アフガニスタンの地域復興チーム(PRT)に同行取材した際、米兵が口にしたのもこの言葉だった。

 しかし右の拳で討伐作戦を進めつつ、左手で学校建設や医療支援を進めるようなことは、本質的な矛盾をはらむ。苦い響きがつきまとうフレーズである。

 軍隊という存在がハーツ&マインズをつかむことがいかに難しいか。基地の負担に苦しんできた沖縄は、この言葉をどう受け止めるだろうか。

 石橋さんの指摘は正しい、と思う。

 ホー・チ・ミン市にある戦争証跡記念館でベトナム戦争の真実を見ることができる。日本において報道されない、報道しない事実がある。だから、たいていの日本にいる人は知らないことになる。それでいて、ベトナム戦争を語る傾向がある。

 こうした記録映画を忘れてはいけない。が、1975年の映画が、それにしても今頃の日本初公開とは不可解と言うしかない。

 いや、あえて公開させない何かがあったと見た方がいいかもしれない。権力側は、大衆に真実を知られることを望まないのは、歴史の教えるところである。 

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