かつて韓国からの留学生が1年間の学びを終え、帰国した後、韓国 馬山での学会の帰途に釜山に住む彼のもとを訪問した。そして、釜山から光州までの300kmを6日間かけて走る「5.18光州民主抗争記念ラン」を企画、実施したときにも彼の世話になった。
何気なく、会話の端々に出ていた彼の父親がベトナム戦争で負傷したこと、そのためにガソリン代が半額であることやその他の恩恵を受けている話を思い出した。やはり、ベトナム戦争の傷跡の一つなのであった。
韓国の法律では、ベトナム戦争に従軍した人々を「戦争参加功績者」としている。
2009年9月、韓国の国家報勲庁は「国家報勲制度」の全面改定作業を行って、「戦争参加功績者」を「国家的功績者」に格上げする方針を決定した。
国会に提案された法案改正の趣旨説明文では、「世界平和の維持に貢献したベトナム戦争参戦勇士」と表現している。
これを見るに、根本的なベトナム戦争とは何だったのかという問いかけを想起せずにはおれない。ベトナム戦争にアメリカ側として参戦した韓国軍が「世界平和の維持に貢献した」とするのは、同じアジアの人間としてあまりに酷い、ではないか。
当然のことながら、ベトナムはこれに反発した。
ベトナムは、「我々は被害者、ベトナム戦争の目的がなぜ世界平和の維持なのか?」とかみついたのだ。
このベトナムの反応に驚いた韓国は、急遽、外相を派遣した。外相会談の中で、韓国側は、「世界平和の維持に貢献した」文言を削除することを約束して政治決着させた。
朝日新聞によると、ベトナム側は、侵略者は「未来志向」といった言葉を使いたがり、過去を忘れようとする、と指摘しているそうだ。併せて、小泉元首相の靖国参拝で韓国や中国が反発した例に倣い、「この問題で日本を批判している韓国なら、我々の考えが理解できるだろう」と訴えたという。
2010年1月6日付朝日新聞では、韓国のベトナム戦争解釈に対しベトナム側が反発した一連の経過を、韓国が日本との間では「侵略行為」を批判してきたが、今回は「侵略者」と追及される立場になった、と報じている。
朝日新聞のこうした報道によって多くの日本の読者はどう感じ、考えるのであろうか。韓国とベトナム間のベトナム戦争解釈の問題は確かに重要な問題なのだ。だが、ベトナム戦争では侵略側に加担した韓国が、韓国と日本の間では被侵略側として日本を批判していることをここでバーターのように併記することでどのような狙いがあるのであろうか。
韓国とベトナム間の問題の中に、日本の侵略事実の問題は入り込まないのである。
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