大学卓球界で富士短大(現在は東京富士大学)はよく知られた存在である。4年間選手を育成できる大学とは異なり、2年間で終える中で育てねばならない。それが4年制大学と比較して不利と言えるか。否、2年間だからこそやれること、やらねばならないことが明確で、集中してできるという。一般にはデメリットと思われることをメリットに変える強さがある。
吉田允昭さんは、10か月で日本語と日本の企業文化を学ぶ、ベトナムの理工系大学卒業の若者を対象とした、工業立国を支える人材育成を目的とした「カイゼン吉田スクール」を立ち上げた。2008年12月のことだ。
学費は無料である。それに現地での初任給相当の約15,000円も支給される。1期生募集枠は15人だ。
これに1千人近くが殺到した。
1期生15人のうち5人が2009年末、日本でパナソニック等に就職した。
吉田さんは、朝日新聞「ひと」欄に2010年1月31日付に登場した(文 都留悦史)。
それによると、大阪生まれ、1960年山一証券入社、73年に企業合併・買収の専門組織を立ち上げ、50歳を前に独立している。現在72歳。経営の最前線から、一昨年、「50年間好き放題にしてきた。恩返しをしたい。」と思っていた矢先に人材派遣会社を経営するベトナム人と出会い、意気投合して「カイゼン吉田スクール」を名誉校長として資金提供することとなった。
吉田さんは、初めて訪れたベトナムに日本が忘れてきた未来への希望や田園風景を見た。
「自分のことで精いっぱいで、国の将来に目を向けてこなかった。閉塞感のある日本をつくった責任は僕らにもある。逃げ得はあかん。」
「行動力とは何か。希望とは何か。ベトナムを教えるのではなく、むしろ学ぶことで、日本の道も見えてくる。」
この「カイゼン吉田スクール」には壮快さを感じる。そして、期待もできよう。
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